くらしの茶花2025.06.15

東京・日本橋にある老舗の古美術店「壺中居(こちゅうきょ)」を訪れ、「紫水会」による「くらしの茶花展」を見学してきました。

静かな店内に足を踏み入れた瞬間、都会の喧騒がすっと遠のき、まるで時の流れが緩やかになったような感覚に包まれました。並べられていたのは、茶室の床の間に飾られる「茶花」。読み方は「ちゃか」ではなく「ちゃばな」と読みます。

茶花は、千利休の「花は野にあるように」という教えに基づいて、華美なものを避け、野の草花をそのまま生けたような、自然な佇まいが大切にされているのだそうです。たしかに、展示されていた花々はどれも控えめながらも、凛とした美しさを湛えていました。「投げ入れ」と呼ばれる、生けるというより“そっと花を置く”ような手法もまた印象的で、作為をそぎ落としたからこそ生まれる美しさがありました。季節の気配を含んだ花々が、まるで小さな物語を語るように静かに咲いていて、「わび」「さび」の精神にほんの少しだけ触れられたような気がしました。

派手さはないけれど、暮らしの中で花を楽しむという心の余白に、何ともいえない豊かさがあるのだと改めて実感。
素敵な空間で静かに花を愛でる時間に、心がゆっくりとほどけていくようでした。

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